単騎―それは究極の戦法
ラインを組んで戦うことが基本の競輪において、「単騎」は究極の選択である。自力選手の場合、守ってくれるマーク選手がいないため、先行するとほぼ間違いなく後ろから捲られて車群に沈む。
しかし、展開がピタリとはまった時の単騎選手の一撃は、いつ見ても爽快だ。今回は、そんな単騎の魅力、メリット、デメリットを紐解く。
単騎のメリット
単騎戦のメリットは、正直多くはない。強いて挙げるとするならば、以下のような点だ。
・別ラインが先行争い等でやり合った時に、捲りが決まりやすくなる
・後ろにマーク選手を連れていないため、自分の好きな動きや位置取りができる
一つ目に関しては、ラインを連れていても同様のことが起こる場合があるため、取り立てて単騎限定のメリットとは言えない。単騎の自力戦では、戦法がほぼ捲りに限られるのでその印象が強くなるのではないか。
また自分の勝利に徹したい際は、あえて単騎を選択して、番手含め位置取りを厳しくする場合もある。その他、自力勝負を貫きたい選手が、同地区の先行選手の番手を固辞して、それぞれ別線で戦うケースも時折見られる。
単騎のデメリット
単騎のデメリットは以下の通り。
・別線をけん制するマーク選手がいないため、先行するとほぼ真後ろから捲られる
・上に関連して、自分で厳しく位置取りをしないと最後方(7番手、9番手)に置かれる可能性がある
・戦法の幅が自力なら捲り、マーク選手なら競りor直線のみの追い込みに限られるため、展開に大きく左右される
自分で動いて好位をキープできればまだ良いが、別線に次々と動かれて最後方に置かれた際は目も当てられない。また、人気のラインにすんなり逃げられるなど、展開にもつれがない際はほとんど1着を取れる可能性は無くなってしまう。
さらに、自力選手の単騎戦とは異なり、マーク選手の単騎戦は著しく1着を取れる可能性が低くなる。先手ライン追走から直線順走で3,4着、というケースがほとんどだ。
単騎の魅力とは
以上のように、単騎戦のメリットはあまり大きくない。それでも、単騎の選手に魅力を感じ、車券を買うファンは多く存在するし、その戦法にこだわってレースを続ける選手もいる。
単騎を選択する選手は、基本的には「自力で勝負することにこだわりを持っている」ことが多い。たとえ同じレースに同地区の先行選手をあてがわれても、自分の戦い方を貫く生き様に、惹かれる人は多い。
そして、不利な状況を跳ねのけて大舞台を制した選手は、その後何十年にも渡ってその勝利を語り継がれる。最近だと、2012年のKEIRINグランプリを制した村上義弘や、2019年の全日本選抜を制した中川誠一郎が記憶に新しい。
しかも、村上は指定練習中の落車による肋骨の骨折を乗り越えての優勝。中川は単騎戦で逃げ切っての戴冠だった。このように二重、三重の不利を乗り越えて大レースを勝利する選手もいるのだから、その走りに魅了されるファンも多いのだろう。
競輪選手のスピード化が進む昨今、今後も単騎・自力戦でG1やグランプリを優勝する選手が出てくる可能性は大いに考えられる。昨年も、山口拳矢が単騎で共同通信社杯を制しており、その走りに注目が集まる。
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