選手はラインを組んでどう戦うか?
前編ではどのように選手が「ライン」を組むかについて解説したが、後編では「ライン」を組んでどのように戦うかを説明しよう。
前編のおさらいはこちらから⇒
ライン戦を理解するためには、それぞれの選手がどのような役目を果たしているかを理解するのが必要不可欠である。
ラインの先頭~風を切り、後続を導く切込み役
「ライン」の先頭を務める選手は、自ら風を切り、他のラインよりもできるだけ前に出ようとしながらレースを動かしていく。
一般的に、「ライン」の先頭選手は年齢が若く、体力や脚力が強いことが多い。なぜなら、直接風圧を受けるからである。
最速で時速70キロにも及ぶ競輪選手が受ける風圧は、ママチャリやシティバイクのそれとは比べ物にならない。当然、体力を激しく消耗する。
激しい風圧と他のラインのけん制に遭いながら、ラインの先頭選手は自らの脚で道を切り開き、自分とラインの勝利に尽力するのである。
ラインの2番手以降~他ラインの攻撃を受け止め、先頭選手を守る司令塔
では、「ライン」の2番手より後ろの選手はどんな役目を果たすのか。
風圧は先頭選手がすべて請け負ってくれるので、体力の消耗は少なく済む。その分、彼らは先頭選手の追走と、他ラインからの攻撃の防御に集中するわけだ。
風を切って前を走ってくれる先頭選手のために、後方から追い込んでくる他の選手を体を張ってブロックする。
そして、先頭選手が良い着でゴールできるように、ゴール寸前の地点で追い抜いてゴールする。
一見前の選手についていくだけに見えて、実は高度な技術を要求されるのが、「ライン」の後ろの選手である。
なぜ、競輪はラインを作って走るのか?
先頭選手は自ら風を切って体力を消耗し、後ろの選手のために前へ走る。
後ろの選手は体力を温存させてもらう代わりに、先頭選手を全力で守りながら走る。
「ライン」の選手が持ちつ持たれつの関係にあることが分かったところで、鋭い人ならこう思うだろう。
「なぜわざわざ『ライン』を作って走るのか?」
競輪は最終的には1着から9着まで順位がつく個人戦であるが、「ライン」の概念が示す通り団体戦としての要素も持ち合わせる。
しかし、先行選手は、体力を消耗しきった挙句、チームを組んでいたはずの後ろの選手に追い抜かれて着を下げる場合が多い。
損な役回りをさせられることもあるのに、どうして「ライン」を組んで走るのか?
これには様々な考えがあるだろうが、筆者が思う理由は2つある。
1つ目は、レースの面白さを維持するため。「ライン」がなければ、年齢を重ねたベテラン選手が勝つチャンスが少なくなり、脚力上位の若手選手ばかりが勝つことになるだろう。
そうなると、レースを行う前から結果が見えてしまう。当然、面白みもないし、配当も安い。車券も売れなくなってしまうだろう。興行的な意味合いも強いのが、この「ライン」である。
2つ目は、「先行選手がベテランになった時の恩恵」である。若い内に先行を重ね、ラインの先輩選手の勝利に貢献すれば、当然選手間での価値や評判が上がる。そうすれば自分がベテランとなった際に、新しく出てきた先行選手の後ろを優先して回ることができるだろう。将来のための、まさに「先行投資」(うまい?)である。
突き詰めていけば「売り上げ」と「選手の成績維持」のために、ラインは存在するということである。
まとめ
長々と講釈を垂れたが、一言で言えば、競輪における「ライン」は選手の互助作用の役目を果たしている。後輩が先輩のために道を開き、先輩は後輩をサポートする…さながら、社会の縮図のような仕組みである。
前後編に渡った「ライン」の説明はこれで終了。次回をお楽しみに。
前回紹介したライン説明の動画
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