目覚ましい117回生の活躍ぶり
昨年7月に本デビュー(早期卒業の2名を除く)し、その直後から各地で活躍を示す競輪選手養成所117回生の72名。2月19日現在で8名がS級に昇級・22名がA級2班に昇班し、来月のルーキーチャンピオンレースにはS級選手が7名出場を予定している。その出世ペースは過去の新人選手と比べても強烈であり、まさに過去最高の逸材揃いと言っても過言ではないだろう。
また、既にS級優勝を飾っている寺崎浩平(福井)、山口拳矢(岐阜)、町田太我(広島)の3名は、複数回優勝を果たしている。一昨年デビューした115回生と比較すると、デビュー翌年の2月までにS級で複数回優勝を飾ったのは高橋晋也(福島)のみ。更にその一つ前の113回生(2018年7月デビュー)は、S級初優勝が翌年3月(松井宏佑(神奈川))となっているため、117回生のスピード出世ぶりが伺える。
117回生の特徴―脚力は過去最強クラス
そんな「銀河系軍団」117回生の最大の特徴は、圧倒的な脚力にある。養成所時代は、過去最多の4名がゴールデンキャップを獲得した他、200mFD・400mFDでは期別平均最高タイムを更新。ナショナルチーム仕込みの訓練が奏功し、過去最強クラスの脚力を兼ね備えている(なお、在所中の119回生は7名がゴールデンキャップを獲得し、記録を更新している)。
近年は選手の低年齢化が進んでおり、一昨年デビューの113回生までは30歳以上の「オールドルーキー」が数名見られたが、115回生はデビュー時点で30代の選手はゼロ。117回生も、2月19日現在30代は吉田勇気(福岡)のみとなっている。また、今年卒所予定の119回生も30代の候補生は71名中わずか2人(最年長は33歳)。先日合格者が発表された121回生は30代が5名(最年長は35歳)だが、実に71名中52名が18~22歳となっている。
競輪選手養成所では正確な合格基準タイムを公表していない。しかし、スピード偏重と言える近年の状況では、絶対的な脚力に劣る20代後半以上の受験生にとって合格が厳しくなってきているのは容易に想像できる。現に昨年、リオデジャネイロ五輪ロードレース代表の内間康平(32)が入所試験を受験するも不合格となっており、その情勢を裏付けている。
117回生は「競輪」をしていない?
しかし、競輪ファンの間では117期に対して、このような評価もなされている。
「ラインを無視しており、自分だけ勝てば良いレースをしている」
「捲り・カマシ偏重になっており、組み立てに難がある選手が多い」
圧倒的な脚力が災い(?)し、チャレンジ・A級上位戦では後ろを引き離して勝つレースが多く、競輪を行う上で重要なラインの存在を軽視している、と言うのだ。
レースの組み立ては、新人選手だけにある程度は大目に見なければならない部分もある。また、新人は必ずしも先行をしなければならないわけではなく、レースを重ねながら自分の脚質に合ったスタイルを確立していくべきである。そのことを踏まえて、次の数字をご覧いただきたい。以下の表は、117回生71名(成清龍之介(千葉)は欠場中のためデータ無し)の内、直近4カ月で逃げと捲りのどちらの決まり手が多いか、その選手数を示したものである(2月19日現在)。
選手数 | |
逃げ>捲り | 40名 |
逃げ=捲り | 6名 |
逃げ<捲り | 25名 |
また、逃げ(捲り)の数字が捲り(逃げ)の数字より4以上大きい選手を「逃げ(捲り)偏重型」、3以下の選手を「バランス型」としたデータは以下の通り。
選手数 | |
逃げ偏重型 | 33名 |
逃げバランス型 | 7名 |
完全バランス型(同数) | 6名 |
捲りバランス型 | 12名 |
捲り偏重型 | 13名 |
逃げてもラインで決まらなかったり、逆に捲りに回ってもマーク選手が強力でライン決着となったりする場合もあるため、この数字はあくまで参考程度に考えていただきたいが、注目すべきは「逃げ<捲り」の選手の内「捲り偏重型」の選手が半数を超えていること。この高めの割合が災いして、「117期は捲りに回りがちでラインを無視している」という印象を持たれているのではないか。
なお、当然かもしれないがクラスが上の選手になる程、捲りの割合が上がっていく。勝利を重視したレースをしている分、1着回数も多く上のクラスに上がりやすい。S級の選手だと山口拳矢、A級2班の選手だと松本秀之介(熊本)、伊藤旭(熊本)、青柳靖起(佐賀)といった選手が捲り偏重型のレースをしている。
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