本当なら5車立ての競輪はまずあり得なかった

「新型コロナウイルス感染拡大のリスク回避のため、2月17日を初日とする開催から3月末までの競輪開催については、『追加・流用・補充のあっせんを行わない』『不足する選手は欠車とし、状況により繰上げ充当を行わない措置やレースカットも併せ実施する』」施策が開始されてから早2週間。初日予選から車数削減やレースカットが行われ、5車立てによるレースも珍しくなくなった。

本来であれば、5車立てのレースなど大量の落車・失格や、補充選手の不参加が無ければまずあり得ないことだった。それこそ、5車立てレースが開催されれば動画のネタになるような時期も存在した(7車立てのチャレンジレースでも、である)。

しかし、実際に5車立てでのレースが連発するようになったのだから仕方がない。今回は、そんな稀有な「5車立て競輪」を考察する。

5車立て競輪のデータ

まず、2月17日~2月28日の5車立てレースのデータを見ていこう。

配当

各クラスごとの配当についてのデータはは以下の通り。

S級(全11レース)2車単3連単
平均配当760円1,833円
最高配当1,940円4,140円
最低配当180円320円
A級上位戦(全23レース)2車単3連単
平均配当1,218円2,602円
最高配当10,760円24,220円
最低配当160円240円
チャレンジ(全11レース)2車単3連単
平均配当467円1,490円
最高配当1,690円4,990円
最低配当110円170円

3連単万車券は全45レース中1レースのみ。6,000円以上の配当も合計2回に留まっている一方で、半数以上の24レースが3連単1,000円未満の配当となっている(S級6回、上位戦11回、チャレンジ7回)。

決まり手の傾向

決まり手の傾向は以下の通り。

S級(全11レース)1着2着
逃げ5回3回
捲り2回1回
差し4回2回
マーク0回5回
A級上位戦(全23レース)1着2着
逃げ7回6回
捲り1回1回
差し15回6回
マーク0回10回
チャレンジ(全11レース)1着2着
逃げ6回3回
捲り2回1回
差し3回1回
マーク0回6回

S級・チャレンジでは半数で逃げ切りが決まっている一方で、A級上位戦では差しが非常に多くなっている。番手をすんなり回れるケースがほとんどであることが要因か。

ライン決着率

S級A級上位戦チャレンジ
ライン決着回数7回16回6回
ライン決着率63.6%69.5%54.5%

全ての開催で半数以上がライン決着となっている。

5車立て競輪のレース傾向

シンプルな展開、自力選手有利、波乱は起きない

大前提として、番手を巡った競りや、早い段階からの先行争いはほとんど発生しない。その理由は二つ。一つ目は、自力選手が2人いる3対2の2分戦の場合、前の選手は最悪でも4番手があるということ。競りや踏み合いで無駄に脚力を消耗するよりかは、なるべく脚を溜めて自分のレースに徹そうという考えが働くため、ほとんどの場合は一本棒からのタテ脚比べになる。

二つ目は、そもそも競りや踏み合いが存在する展開が生まれないこと。先行力のあるラインが前から突っ張ったり、一旦引いてからでも一気にダッシュを仕掛ければ、別線は飛びついたり合わせたりするのがのが非常に困難になる。その結果、主導権を奪ったラインで上位独占という形になり、堅い決着が連発するという仕組みである。

本を正せば5人しか選手がいない場合、7車や9車の時に比べてもつれる要素が格段に減る。純粋に追い抜くべき選手が減るからだ。その上、脚力のある自力選手は後半のレース(最終日であれば選抜、特選)に出場する可能性が高いため、5車立てで組まれる一般戦には1人や2人しか残らないケースが多い。そうなれば、その自力選手が自分の好きにレースを組み立て、後ろの選手はそれに続いて堅いライン決着となる場合が多い、ということになる。

波乱が起きるとすれば?

もし5車で波乱が起きるとすれば、自力選手が不在となり、かつ以下のような条件が揃った場合だ。

・得点上位の選手に先行実績が無く、かつラインの前を回る。その選手に自力が無ければなお良い

別線も動ける選手がおらず、その得点上位の選手が逃げざるを得ない展開が予想される

いくら得点上位の選手と言えども、自力を持っていなかったり、慣れない先行をさせられたりすると、直線で末を無くして着外に敗れるケースが考えられる。そうなった場合に、後ろで脚を溜めていた選手がズブズブと差し込んでくるのが、5車立てでの波乱決着である。

現に、期間中唯一の万車券決着となった2月18日大垣6Rは、87点台と得点断然も自力が無かった①柴田祐也が逃がされた結果、末を無くして4着に敗れたものであった。

とは言うものの、45レース行われて万車券がこれ1回というデータが物語るように、5車立てで高配当を狙うのは無謀というもの。機動力のある自力選手を中心に、ライン決着で点数を絞って勝負するのが基本であり、本命党のためのレースであると言えよう。

補足

最後に一つ補足しておくが、5車立てレースにおいては後ろから抑えようとした選手が、勢いをほとんど付けずに前の選手に誘導を「切らせる」場面が散見される。前を切ったり抑えたりするにはあまりにもスピードが不足している仕掛けであるため、筆者は抑えるのが目的ではなく、前の選手に誘導を切らせて少しでも脚力を消耗させようという狙いがあるのではないかと見ている。これについては、もう少しレースを確認して考察を深めたい。

まとめ

今回は5車立てレースについて考察した。今後、3月末の開催までは5車立てレースが日々どこかで行われるものと思われるが、基本は堅い決着ばかりだということを念頭に置いて車券を購入していただきたい。

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