全日本選抜競輪の歴史を紐解く
2月20日(土)~2月23日(祝・火)の4日間、川崎競輪場でG1「第36回全日本選抜競輪」が開催される。今回は、全日本選抜競輪の歴史を紹介すると共に、過去5年の優勝戦を振り返る。
全日本選抜競輪の歴史
全日本選抜競輪のルーツ
全日本選抜競輪のルーツは、1951年から毎年、全国競輪場の持ち回りで開催されていた『全国都道府県対抗競輪』(のち『全国都道府県選抜競輪』)にある。この開催は都道府県単位でチームを結成して各種目別に個人優勝と団体優勝を争っており、各都道府県の代表選手を選抜して出場選手を決定する現在の全日本選抜競輪と似たような方式を取っていた。
しかし、1969年8月に甲子園競輪場で開催予定だった第26回大会が地元住民の猛烈な反対運動にあい、開催10日前に中止となった。その背景には、昭和30年代~40年代の競輪人気の過熱に伴う警備上の問題があった。近畿地区ではかつて、競輪史に残る騒擾事件として悪名高い「鳴尾事件」(※)が発生しており、その後遺症を完全には拭い去れていなかった他、万一の事故を懸念して特別競輪の開催を躊躇するような雰囲気もあった。そのような状況により、『全国都道府県選抜競輪』はそのまま翌年以降開催されること無く廃止となってしまった。
それから10数年が経過した1980年代前半、選手の出身地別の郷土色を生かした特別競輪を復活させたいという意見が浮上し、慎重な検討を重ねて誕生したのが、全国を8地区に分けた地区ごとの成績上位者によって争われている『全日本選抜競輪』である。
(※)鳴尾事件…1950年9月9日に鳴尾競輪場(のちの甲子園競輪場)で発生した騒擾事件。レースの進行および結果確定に不満を持った観客が暴徒化して走路・投票所などに乱入し、約250名の逮捕者が出た。
全日本選抜競輪として実施以降の動き
全日本選抜競輪は、ビッグレースがそれまで存在しなかった夏季に、主として避暑地の地方都市を舞台に開催することを目指して発足した面もある。第1回は7月31日~8月5日に前橋競輪場で開催され、優勝者は佐々木昭彦(佐賀)だった。当初は6日制だったが、1996年の第12回から4日制に短縮された。
また、2001年度から実施された競輪の番組制度改革に伴い、第17回大会から以下のように条件が変更された。
・開催時期がそれまでの7月下旬~8月上旬の間から11月に変更。
年末開催になったことにより、KEIRINグランプリ出場の事実上の最終選考会的な要素(優勝者は自動的に同レースに出走できる)が含まれるようになった。
・読売新聞社から社杯が授与されるようになり、それに伴い開催名称が現在の「読売新聞社杯全日本選抜競輪」に変更された。
・出場選手選定方法も見直され、ふるさとダービー (4月、6月、8月の3回にわたって地方都市の競輪場で開催)の各決勝戦に勝ち上がった9選手(計27選手)がシードされ、そのうち上位入賞3選手(計9選手)が特別選抜予選(2次予選に自動的に勝ち上がり)へ出場できるようになった。
さらに2005年の第21回大会から開催時期が12月に変更され、さらに2005年度よりふるさとダービーが全日本選抜競輪のトライアル競走ではなくなったため、ふるさとダービーの各決勝戦上位入賞3選手が特別選抜予選にシードされるシステムはわずか4年で廃止された。
2009年の第25回大会からは開催時期が8月に移行し、以前のような夏季開催が復活した。
また2012年度から、G2以上のビッグレースの体系見直しによる日程のバランス調整のため、開催時期を年度末の2月に再変更し現在に至る。なお、2012年度の大会は2013年2月開催だったため、2012年の同大会は日程調整上行わなかった。
なお、今年の全日本選抜競輪は川崎競輪場で開催されるが、川崎競輪場でのG1(相当の競走)開催は1965年のオールスター競輪以来56年ぶりとなる。
過去5年の優勝戦をプレイバック
ここからは、過去5年の決勝戦を映像と共に振り返る。
2016年
主役は3人揃った福島勢。最終ホームから仕掛けた新田祐大の先行に乗り、渡邉一成が直線抜け出して優勝。福島3人で上位独占を決めると共に、デビュー14年目にして悲願のG1優勝を遂げた。
車番 | 選手名 | 登録地 | |
1着 | ⑨ | 渡邉一成 | 福島 |
2着 | ③ | 佐藤慎太郎 | 福島 |
3着 | ① | 新田祐大 | 福島 |
2017年
先行した三谷竜生の番手を奪取した平原康多が、捲った新田祐大の後位に更に切り替えて直線抜け出し優勝。通算7度目のG1制覇となった。
車番 | 選手名 | 登録地 | |
1着 | ⑦ | 平原康多 | 埼玉 |
2着 | ① | 武田豊樹 | 茨城 |
3着 | ② | 新田祐大 | 福島 |
2018年
打鐘8番手から抜群のスピードで捲った新田祐大が、村上義弘の番手捲りを呑み込んで優勝。通算6度目のG1制覇を果たした。
車番 | 選手名 | 登録地 | |
1着 | ① | 新田祐大 | 福島 |
2着 | ⑨ | 村上義弘 | 京都 |
3着 | ⑦ | 村上博幸 | 京都 |
2019年
単騎戦となった中川誠一郎が最終ホームで先行し、そのまま後続を振り切る離れ業を披露して優勝。2度目のG1制覇を飾った。
車番 | 選手名 | 登録地 | |
1着 | ① | 中川誠一郎 | 熊本 |
2着 | ⑨ | 佐藤慎太郎 | 福島 |
3着 | ⑤ | 吉澤純平 | 茨城 |
2020年
松浦悠士の先行を活かした清水裕友が番手捲りから押し切りG1初制覇を成し遂げた。
車番 | 選手名 | 登録地 | |
1着 | ⑨ | 清水裕友 | 山口 |
2着 | ⑤ | 平原康多 | 埼玉 |
3着 | ⑥ | 山田英明 | 佐賀 |
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