先行1車は黙って買え
競輪には、「先行1車は黙って買え」という格言がある。先行1車とは、文字通り先行選手がメンバー中1人しかいないことを指す。なぜそのように言われるのか?今回は、その理由とちょっとイレギュラーなパターンを考察する。
先行1車とは?&先行1車が有利な理由
まず、先行1車について簡単に説明しておこう。
「先行1車」とは、先行選手が1人だけで、他が全員捲り・追い込み選手であることを指し、「逃げイチ」と呼ばれることもある。そのような「先行1車」が有利な理由は以下の通り。
①別線との駆け引きがない
まず前提として、競輪は「ライン」どうしの駆け引きによってレースが展開する。そして、レースを動かすのは、自分でラインを引き連れる先行選手(いわゆる「自力型」の選手)である。例えば、先行選手が3人いる3分戦の場合、どのラインが逃げるのか、捲るのか…。ラインの前を受け持つ選手は、別線の先行選手を気にしながらレースを運ばなければならない。
しかし、先行選手が1人しかいない場合は、仕掛けてくる選手も1人しかいないので駆け引きがほぼない。自分の好きなタイミングで仕掛けられる上、他の選手が早めに巻き返してくることも無いため、自分の脚力を温存しながら走ることが出来る。つまり、完全なマイペースで走ることが出来るので、圧倒的に有利となるわけだ。
②番手以下が競りになる可能性が高い
①に関連して、先行選手が1人しかいないと、自動的にその選手が逃げることになるため、その後ろがもっとも追い込み選手にとって有利な位置になる。すなわち、追い込み選手どうしで番手の位置をめぐって競りが発生する可能性が高くなる。ただでさえ先行選手が脚力を温存できるのに、後ろの選手が競りで脚力を消耗するため、ますます先行選手が押し切れる確率が高くなる、ということだ。
③そもそも脚力が圧倒的に勝っている
そして、そもそも先行選手と他の追い込み選手では脚力に差があることも理由の一つとなる。先行選手は自分でレースを動かしていかなければならないため、一定以上の脚力が求められる。一方で、追い込み選手は衰えた脚力を、先行選手の後ろを回ることでカバーしている。展開などをすべて無視しても、そもそも脚力が1人抜けている選手がいるという時点で、先行選手が有利な理由となる。
「先行1車」と「自力1車」の違い
ここで、よく混同される「先行1車」と「自力1車」の違いを押さえておこう。
「先行1車」は、「逃げイチ」の別名の通り逃げられる選手が1人しかいない場合に用いられる。逆に言えば、別線には捲りが打てる選手がいる可能性もあり、この場合は極端に先行選手がペースを落としすぎると、捲り選手の奇襲に遭うこともある。
一方、「自力1車」は逃げられる選手が1人しかいない+別線にも仕掛けられる選手が1人もいない場合に用いられ、完全に先行選手がペースを握ることができる。こちらは先行選手が圧倒的に有利となり、番手が競りとなる可能性も高くなる。
「先行1車」と「自力1車」を比べると、当然先行選手に対する脅威が少ないという点で「自力1車」の方が本命の信頼度は上がる。しかし、「自力1車」で1人しかいない自力選手が、逃げよりも捲りを主戦法としている場合、慣れない先行勝負を強いられるため、逃げを中心としている選手よりも若干リスクが上がる。それでも、レースを動かせるのはその自力選手のみなので、本命が有利となることに変わりはない。
まとめると、先行選手(自力選手)の信頼度は逃げ中心の自力1車>捲り中心の自力1車>逃げ中心の先行1車となる。
こんなパターンも
ここからは、先行1車・自力1車をめぐるちょっとイレギュラーなパターンを紹介する。
①競りの決着は神のみぞ知る
先行1車・自力1車の場合は、番手が競りになる可能性が高いと説明したが、その競りの決着はもはや誰にも分からない。選手固有のヨコの強さを覚えておく必要があるが、タイミング次第ではヨコの強さが関係なくなる場合もあり、先行選手1着でも2着、3着に思わぬ人気薄が突っ込んで高配当が飛び出すこともある。
②先行選手と捲り選手の実力差を考えよう
また、「先行1車」の先行選手よりも、別線の捲り・追い込み選手の方が競走得点が高い場合は、差はほぼフラットであると考えられる。いくら展開が有利でも、捲り選手にも仕掛ける脚はあるだけに、実力差で逆転を許すケースもあり、その辺りはしっかりと出走表や近況成績を確認しておこう。
③伏兵の思わぬ追い上げ・奇襲も
そしてこれはレアケースだが、先行選手が後ろを競らせて極端にペースを落とした場合。番手が競りになっているため、先行選手はマイペースで走っているものの後ろが見にくい。そこを、後方で脚を溜めた追い込み選手が玉砕覚悟でカマしたり、番手でガチガチに競り合ったところを上手く追い上げマークを決めたりすることがある。特に、一気にカマして後続をぶっちぎると、先行選手の対応が遅れて逃げ切りを許す展開もあり、こうなってしまうとタイトルの格言は脆くも崩れ去る。
まとめ
今回は、「先行1車は黙って買え」という格言と、それに関連した様々なケースを解説した。基本的に先行1車は先行選手の1着で考えればよいが、毎回そうはならないのも競輪の難しさであり、面白さでもある。初心者の方はレースを見ながら、どのような展開があり得るかを学び、経験を積んでいただきたい。
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