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伝説に残る競輪名勝負を振り返る!~観るだけで心震える名勝負の数々~

KEIRINグランプリ2012のゴール前

語り継がれる競輪名勝負

プロ野球の10・8決戦(※注)のように、競輪にも「名勝負」とされるレースがいくつか存在する。今回は、そんな競輪名勝負の中から、3つのレースをピックアップしてご紹介する。

※10・8決戦…1994年10月8日、読売ジャイアンツと中日ドラゴンズが優勝を争った日本プロ野球史に残る伝説の名勝負。

①史上2回目のG1兄弟ワンツー~2010年日本選手権競輪

1つ目は2010年に松戸競輪場で行われた日本選手権競輪決勝。出走選手は以下の通り。

選手名登録地年齢期別今回成績
村上義弘京都3573❶❶②
伏見俊昭福島3475❷❼①
加藤慎平岐阜3181❻③①
坂本亮馬福岡2490❷❺③
村上博幸京都3086❹②②
松坂英司神奈川3582②②③
山口幸二岐阜4162❸❷②
井上昌己長崎3086❸❹③
山崎芳仁福島3088❶❻①
並び:⑨②⑥・①⑤・③⑦・④⑧

このレースの注目は①村上義弘・⑤村上博幸の兄弟コンビ。2人が揃ってG1決勝(トーナメント制)に進出するのはこれが始めてであり、大きな期待を集めていた。

なお、直前の人気は昨年のグランプリでも連携した⑨山崎芳仁―②伏見俊昭の福島勢。その他、③加藤慎平、⑦山口幸二、⑧井上昌己と、グランプリ優勝経験者4人が揃った決勝戦となった。

最初のレースが2010年日本選手権決勝

レースは、残り1周半から仕掛けた①村上義弘―⑤村上博幸を、③加藤慎平―⑦山口幸二の岐阜勢が追う展開。そのまま5番手以降が離れ、前4人の勝負に。直線は番手⑤村上博幸が抜け出し優勝。逃げた①村上義弘も2着に粘り、1976年オールスター競輪の藤巻昇・清志以来、2度目のG1決勝兄弟ワンツーを成し遂げた。

村上博幸はこれがG1初優勝。この後、5月のSSシリーズ風光る、更にはKEIRINグランプリ2010も優勝し、2010年の賞金王に輝いた。特に、グランプリでは再度兄弟連携が実現。兄の捲りを足場にし、直線の混戦を抜け出して優勝を果たした。

また、2着に入った村上義弘は、2003年の一宮オールスター優勝以来実の6年半ぶりのG1決勝の表彰台。一時期は完全にスランプに陥り、大舞台から遠のいていたが、この兄弟ワンツーをきっかけに完全復活。翌年の名古屋日本選手権優勝へとつながった。

②東西横綱対決・吉岡VS神山~KEIRINグランプリ95

2つ目は、1995年に立川競輪場で行われたKEIRINグランプリ95。出走選手は以下の通り。

選手名登録地年齢期別
吉岡稔真福岡2565
小橋正義岡山2859
高橋光宏群馬3356
滝澤正光千葉3543
児玉広志香川2666
三宅伸岡山2664
井上茂徳佐賀3741
松本整京都3645
神山雄一郎栃木2761
並び:①⑦・⑨(③⑤)・⑥②・④・⑧

この年の競輪界は、東の横綱・⑨神山雄一郎を中心に回っていた。高松宮記念杯、全日本選抜、競輪祭と特別競輪(今のG1)を3勝。このグランプリを勝てば、史上初の獲得賞金2億円を達成するという快進撃だった。

一方で、西の横綱・①吉岡稔真はこの年不調。特別競輪優勝はおろか、表彰台すらない有様で、獲得賞金額でも大きく神山に水を開けられていた。それでも、人気はこの神山・吉岡の東西両雄に集中していた。その他、この年日本選手権と寛仁親王牌を制した②小橋正義、グランプリ2度優勝を誇る④滝澤正光、グランプリ連覇を狙う”鬼脚”・⑦井上茂徳と往年の名選手が揃った一戦となった。

レースは、最終ホームで主導権を奪い切った⑨神山雄一郎に、①吉岡稔真が襲い掛かる展開。神山と吉岡以外の選手は全く動けず、追走が精一杯という形で、直線は完全に2人のマッチレース。肩を並べた直線の攻防は、吉岡が1車輪差神山を捕らえてのゴールとなった。

吉岡はこれが1992年に続き、グランプリ2度目の制覇。初優勝時も神山を下しての勝利であり、改めて大舞台での勝負強さを示した。現に、2006年の引退まで日本選手権も4度制しており、現役最晩年まで自力一本で最高峰を戦い続けた。

逆に、神山は2020年現在も現役を続けており、グランプリにはこれまで16回出場したものの制覇は一度もない(2015年には47歳でグランプリ出場)。1999年には史上初のG1完全制覇(1994年に寛仁親王牌が創設されてからG1が6つとなったため、6G1制での完全制覇は史上初)を達成したにもかかわらず、グランプリ優勝にだけ手が届いていないこの事実は、競輪界の大きな謎の一つとして語り継がれている。

③雨中の決戦・運命を分けたタイヤ差~KEIRINグランプリ2012

3つ目は、2012年に京王閣競輪場で行われたKEIRINグランプリ2012。出走選手は以下の通り。

選手名登録地年齢期別
武田豊樹茨城3888
佐藤友和岩手2988
成田和也福島3388
村上義弘京都3873
山崎芳仁福島3388
長塚智広茨城3481
岡田征陽東京3285
浅井康太三重2890
深谷知広愛知2296
並び:②⑤③・①⑥⑦・⑨⑧・④

全員がグランプリ初制覇を懸けるメンバーの中、注目は①武田豊樹に集まった。この年は高松宮記念杯、競輪祭とG1を2度制しており、昨年2着の雪辱にファンの期待が寄せられていた。

その他、北日本の大砲・②佐藤友和率いる東北勢の連携も強力。競輪界の”平成の怪物”・⑨深谷知広の2度目のグランプリ挑戦にも注目が集まっていた。そんな中、④村上義弘単騎戦を強いられた上、指定練習中に落車、肋骨を骨折するアクシデントに見舞われる。欠場もあり得る状況の中、村上は骨折を公表してレースに臨むという異例の事態となった。

レースは打鐘手前で②佐藤友和が車体故障に見舞われ、戦線を離脱する波乱の展開。①武田豊樹を⑨深谷知広が最終ホームでねじ伏せるが、その後ろを追っていた④村上義弘が単騎で捲り3コーナーで前を捕らえる。切り替えた⑧浅井康太、後方から切り替えて中を割った③成田和也がそれを追い、ゴール前は3車が横に並んだ大接戦。写真判定の結果、④村上義弘が③成田和也の追撃をタイヤ差振り切ってグランプリ初制覇を果たした。

単騎戦、それに骨折を押しての出場という圧倒的に不利な状況を跳ねのけて優勝するという、信じられない離れ業を成し遂げた村上。この後、2016年にもグランプリを制覇し、史上7人目のグランプリ複数回優勝を達成した他、4度の日本選手権優勝を果たしている。2020年現在はS級1班に甘んじているものの、現在も近畿地区不動の総大将として、G1戦線でも存在感を示し続けている。

まとめ

今回は、競輪史に残る名勝負を3選ご紹介した。まずは競輪初心者に見ていただきたいレースをピックアップしたが、いかがだっただろうか。

今年は依然として厳しい情勢が続いており、グランプリはもちろん、G1・G2もまともに競輪場で観戦できない状況だが、名勝負の素晴らしさはどこで観戦しても変わらない。今後も、歴史に残る名勝負の誕生を待ちながら、競輪を楽しんでいただきたい。

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