あなたは競輪の「名人戦」を知っているか

幻の開催「名人戦」

現在、ボートレースでは45歳以上の選手のみを集めた「マスターズリーグ」が各地で開催されており、円熟の技の応酬が繰り広げられている。

ところで、競輪界にもその「マスターズリーグ」のような開催が行われたのをご存知だろうか。もちろん、現行の競輪で年齢制限を設けた開催は行われていないが、2009年～2011年にかけて川崎競輪場で開催された「名人戦」（2009、2011は「川崎名人戦」の名称で開催）がそれだ。

F2開催なので、前半のA級チャレンジレースと後半のA級上位戦に分かれるが、「名人戦」の対象となるのは後半の上位戦。補充・追加を除き、出場が可能なのは40歳以上の選手で、その分当然自力選手は手薄になる。それでも、出場した選手はどれも往年の名選手ばかり。熟練の先行テクニックや、競輪の醍醐味である競り合いが随所に見られた他、出場選手は全て昭和39年～59年に使用された旧々ユニフォーム（1番車から白、黒、赤、青、黄、白黒、白赤、白青、赤青）を着用してレースに臨み、オールドファンに喜ばれた。

しかし、2011年は最終日の第9レースまで実施したところで、東日本大震災が発生。第10レース以降が中止となり、第3代の「名人」決定戦は幻と終わった。そして、この年限りで名人戦も立ち消えとなり、今年に至るまで開催は行われていない。

今回は、唯一映像が残っている2009年の名人戦決勝の模様をプレイバックする。

2009年競輪名人戦決勝　

番	選手名	登録	年齢	期別
①	鈴木栄司	千葉	47	50
②	田谷勇	大阪	44	54
③	倉岡慎太郎	熊本	41	59
④	香川武宣	兵庫	50	48
⑤	松枝義幸	岡山	47	47
⑥	菅田順和	宮城	55	36
⑦	三好章仁	香川	48	43
⑧	古見浩一郎	山口	45	52
⑨	小磯伸一	福島	48	47

並び：１９６・３７・８５２４

人気の中心は後に500勝レーサーとなる３倉岡慎太郎。鋭いダッシュを武器に1990年代は特別競輪でも活躍。ここはS級からの降級で格上の存在と見られ、抜けた頭人気に推された。マークの７三好章仁は1990年宇都宮オールスター準優勝がある名マーカー。

別線ではこの後、60歳まで現役を続けることとなる１鈴木栄司が人気対抗格。直接の目標はないが、前々自在戦で活路を見出す。ラインが長くなった８古見浩一郎は40代を迎えても新人並みの先行力を持つ先行職人で、連日バックを取って展開有利に押し切っている。

その他、1983年のいわき平オールスターを制した”コンコルド”６菅田順和や、1991年の競輪祭で小橋正義との同期ワンツーを決めた５松枝義幸、1983年新人王戦の覇者・９小磯伸一など、昭和・平成を彩った名選手が揃った。

レース

https://www.nicovideo.jp/watch/sm5945534

（ニコニコ動画より）

レースは赤板から動いた８古見の番手に１鈴木が飛び付く展開。スローペースとなった所を最終ホームから３倉岡が仕掛けると、マーク７三好が離れ、８古見が2番手を追う。直線は３倉岡が追いすがる８古見を振り切り、優勝のゴールを飾った。

	番	選手	決まり手	上り
1着	③	倉岡慎太郎	捲り	11.8
2着	⑧	古見浩一郎	逃げ	11.9
3着	①	鈴木栄司		11.7

2車単　③⑧　3,430円　3連単　③⑧①　18,300円

決勝進出者のその後

2022年現在、決勝進出者の中で現役を続けているのは倉岡のみ。直近では、鈴木が昨年7月に60歳で引退した他、小磯が2019年に59歳で、田谷が2018年に54歳で引退している。

まとめ

今回は、かつて行われた「名人戦」について紹介した。2022年現在、復活の話などは一切立っていないが、A級3班のチャレンジレースでは、時折2日目、最終日の一般戦で同じようなレース（出走選手が全員40代以上）が行われている。もちろん、S級戦に比べて注目を集めることは少ないレースだが、観戦してみるのも面白いのではないか。