寛仁親王牌決勝戦結果
前橋競輪場で行われた「第29回寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメント」は今日決勝が行われ、福井94期の脇本雄太が優勝した。脇本のG1優勝は今年2回目、通算5回目。寛仁親王牌は2018年以来2回目の制覇となった。2着には新田祐大、3着には東口善朋が入った。払戻金は2車単が①⑤で720円(1番人気)、3連単が①⑤④で4,500円(12番人気)。決まり手は逃げ―捲り。全着順は以下の通り。
着 | 枠 | 番 | 選手名 | 登録地 | 上り | |
1 | 1 | 1 | 脇本雄太 | 福井 | 9.4 | HB |
2 | 4 | 5 | 新田祐大 | 福島 | 9.2 | 3/4車身 |
3 | 4 | 4 | 東口善朋 | 和歌山 | 9.5 | 2車身 |
4 | 5 | 7 | 松浦悠士 | 広島 | 9.1 | 1/2車身 |
5 | 6 | 9 | 守澤太志 | 秋田 | 9.1 | 1車輪 |
6 | 3 | 3 | 郡司浩平 | 神奈川 | 9.1 | 1車身1/2 |
7 | 2 | 2 | 山田英明 | 佐賀 | 9.1 | 1車身1/2 |
8 | 5 | 6 | 山田庸平 | 佐賀 | 9.0 | 1/2車輪 |
9 | 6 | 8 | 橋本強 | 愛媛 | 9.2 | 1車身 |
決勝戦回顧
初手は⑦松浦―⑧橋本―⑤新田―⑨守澤―③郡司―①脇本―④東口―②山田英―⑥山田庸。青板から②山田英が動いてインを切ると、⑦松浦は中団、⑤新田と①脇本は後方でにらみ合う展開となった。赤板で①脇本が仕掛けると、打鐘で一気に前に出て先行。⑤新田は一旦①脇本に遅れを取ったが、最終3コーナーで3番手に収まった。⑦松浦、②山田英、③郡司は完全に踏み遅れて不発。前3人の勝負となり、直線は①脇本が迫る⑤新田を振り切って優勝のゴールを果たした。
圧巻のマッチレース。世界トップクラスの走りを目の当たりにできた前橋競輪場のファンは、何という幸運だろうか。別線の抵抗をあざ笑うかのような脇本雄太と新田祐大のスピード。平成の東西横綱・神山雄一郎と吉岡稔真を彷彿とさせるライバル関係である。
青板~打鐘まで
レースは青板から動いた。山田英明―山田庸平の兄弟ラインが早めにインを切り、郡司浩平、松浦悠士がそれに続く。しかし、この時点で新田と脇本は悠然と車を後方に下げ、互いを意識しあっていた。「ライバルは新田(脇本)だけ。新田(脇本)さえ抑えれば優勝できる」という心の声が聞こえてきそうな展開だった。
そして赤板ホーム、先に動いたのは後ろの脇本だった。先に動くと目標にされる分不利だが、8番手まで下げさせられては致し方ない。むしろ後方に追いやられて、ローズカップの二の舞を踏む方が最悪のシナリオだろう。待ってましたとばかりに新田がそれを追い、打鐘過ぎ3コーナーまでに東口善朋と共に前に出切った。この時点で、後ろの6選手は勝負権を失ってしまった。
松浦は山田英に先んじてインを切り、脇本の上昇に合わせて3番手を狙う作戦だった。しかしペースが緩み、究極のダッシュ力勝負になってしまってはさしもの松浦でも対応できない。成す術無く踏み遅れ、前3人の後塵を拝する結果となった。
打鐘~ゴール
かくして、脇本の先行、新田が3番手という展開で残り500mのスピード勝負が始まった。ここで新田がぴったり番手に入っていれば、優勝は新田だったかもしれない。それを阻止したのが、番手の東口の存在。準決勝でも脇本のダッシュに寸分離れず追走した名マーカーが、決勝戦でも最終2センター付近まで脇本に食い下がり、見事に優勝をアシストした。
しかし、脇本のスピードはそれら全ての要素を排除したとしても、群を抜きすぎていた。この記事を作成している時点では1周タイムは出ていないものの、恐らくは残り1周~残り半周も9秒台前半が出ているのではないか。ダッシュ、スピード、持続力、どれをとっても日本史上最強クラスなのは間違いない。
もちろん、新田の力が脇本に劣っているわけでは決してない。赤板~打鐘にかけてやや踏み遅れて車間が空いたものの、これは前から後ろの脇本を見ていたことで仕掛けがほんの少し遅れたため。後ろの6選手が全くついて行けなかったことを考えれば、この2人の力はやはり五分だと考えられよう。
超高速でスピード型が圧倒的に有利な前橋バンクだったこと、それぞれがそれぞれの動きを意識し合った結果スローペースとなり、究極のダッシュ力勝負となったことが、脇本の勝因であり、新田を除く7選手の敗因だったと言える。
松浦・山田・郡司の各選手が力量的に劣っていたわけでも、作戦を講じなかったわけでもなく、3人とも文字通り精一杯の抵抗を試みていた。それでも、結果がこれである。今回は舞台設定がナショナルチーム組に有利だったことと、純粋なスピードの差が如実に表れる展開となってしまったことが、各選手の敗因だった。悲観する必要はない…とは言えないが、舞台がまた変われば脇本・新田を逆転するチャンスはいくらでも巡ってくるだろう。
まとめ
今回は脇本・新田の、脇本・新田による脇本・新田のための親王牌となった―というのが筆者の印象である。やはりこの舞台にこの二人を置いてしまっては、他の選手はよほどラインや展開の利がないと逆転は苦しい。
逆に言えば、また屋外の400mバンクに戻れば逆転の可能性は十分残されているということになる。今年のグランプリの舞台は平塚。脇本を封じるためにも、他の選手はここからまた練習を重ね、最大限の対策を練って大舞台に帰ってくるだろう。
なお、今回は2日目に4件の失格が発生した。位置取りが特に重要な前橋だけに多少に失格はやむを得ないところはあるが、それでも1日に4レースは多かった。上位入着での失格もあっただけに、選手には今後も細心の注意を払ってもらいたい。
次回のグレードレースは10月24日から京王閣競輪場で行われるG3「ゴールドカップレース」。どうぞお楽しみに。
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