落車・失格が頻発した高松宮記念杯
先日終了した「第72回高松宮記念杯競輪G1」は、2日目・3日目に事故が多発。8名が落車/事故棄権、6名が失格となり、3日目は1R・2Rが6車立て、最終日は5車立てで実施される事態となった(3日目3Rも7車立て)。今回は、この事象について改めて考え直してみることにする。
2日目・3日目に発生した事故
まずは、2日目・3日目に発生した事故を一覧でまとめる。
2日目
レース | 競走種別 | 選手名 | 結果 | 失格事項 |
2R | 選抜 | 佐々木豪 | 落車棄権 | |
2R | 選抜 | 武藤龍生 | 失格 | 中割り |
6R | 東二次予選 | 萩原孝之 | 落車棄権 | |
6R | 東二次予選 | 芦澤辰弘 | 失格 | 押上げ |
8R | 東二次予選 | 郡司浩平 | 事故棄権 | |
8R | 東二次予選 | 芦澤大輔 | 失格 | 斜行 |
10R | 東二次予選 | 和田健太郎 | 落車棄権 | |
10R | 東二次予選 | 松井宏佑 | 落車棄権 | |
10R | 東二次予選 | 佐藤友和 | 落車棄権 | |
10R | 東二次予選 | 諸橋愛 | 落車棄権 | |
10R | 東二次予選 | 眞杉匠 | 失格 | 外帯線内進入 |
3日目
レース | 競走種別 | 選手名 | 結果 | 失格事項 |
9R | 西準決勝 | 野原雅也 | 落車棄権 | |
9R | 西準決勝 | 原田研太朗 | 失格 | 外帯線内進入 |
11R | 西準決勝 | 小倉竜二 | 失格 | 押上げ |
2日目8Rには大本命・郡司浩平が車体故障による事故棄権、10Rには昨年のグランプリ覇者・和田健太郎が2節連続となる落車を喫しており、いずれのレースも大波乱となった。
車数削減が行われたレース/開催全体の売上
次に、車数削減が行われた3日目1~3Rおよび最終日1~2Rの売上を、2日目の1~3Rと比較する。
2日目 | 3日目 | 最終日 | |
1R | 76,724,700円 | 56,221,400円 | 44,070,300円 |
2R | 72,597,800円 | 60,238,300円 | 51,033,200円 |
3R | 73,219,300円 | 71,293,300円 | ― |
3Rこそ2日目とほぼ同等の売上となったものの、3日目1Rは2,000万円、2Rは1,200万円の売上減。さらに最終日1Rは2日目比3,200万円、2Rは2,000万円の売上減となった。金曜と土日ということを考慮しても、車数削減の影響は大きいと言える。
また、開催全体の売上も81億0018万0700円と、目標の90億円には約10億円届かない結果となった。売上目標を満たせなかった一つの原因には、この車数削減があることは間違いない。
興行面でも魅力が減少
また、興行的な面でも、この事故の多発は大きな影を落としている。まず、先述の通り棄権となった郡司・和田共に3日目以降を欠場。目玉となるS級S班の選手を一気に2人失ったことになり、集客面で大きな痛手となった。さらに、3日目の1R・2Rは共に逃げたラインがそのままワンツーを決める単調な展開。「これがG1か?」と疑問符を付けざるを得ない、寂しいレースとなった。
新生・岸和田バンクが落車多発の遠因?
今回、高松宮記念杯競輪は改修工事を経て2年ぶりに岸和田競輪場で開催されたが、その間にバンクも改修が行われ、全面的に塗り直しが行われた。全選手にとって久々の岸和田参戦の上、若手選手の中にはそもそも当バンクで走ったことの無い選手も何人かいた。走り慣れていないバンクが選手の感覚を狂わせ、落車・失格を多発させた可能性は十分にある。
落車・失格では誰も得をしない
しかし、残念ながらここまでの事象を踏まえると「落車・失格で誰も得をすることはない」と言わざるを得ない。特に、多くのファンの注目が集まるG1開催ではその傾向が強いだろう。
・落車/失格が多発し、常識的な予想では的中できないような結果が続くと、ファンの車券購買意欲が減退し、売上減に繋がる。また、今回のように目玉選手が相次いで戦線を離脱すると、集客面で大きなマイナスとなる。
・今回のように車数削減を行うと、レースレベルそのものの低下に繋がり、G1としての「格」が疑問視される。「G3以上の開催は9車立て」という施策に基づき、9車の競輪を求めて観戦するファンにとっては、魅力の無いレースのなったと言わざるを得ない。
・選手にとっても、落車でプラスになることは何一つない。特に、今節の和田健太郎は落車欠場明け初戦であり、今回の事故でまた大きく歯車が狂ったことだろう。
もちろん、落車により大万車券を的中させたファンもいるだろう。また、選手にとっても、年に何回とないG1出場のチャンスに、全身全霊を懸けて挑んでいるのも理解している。それでも、その気合の結果が、このように誰も得をしないものになってしまうのは、競輪界全体にとって決して良いとは言えない。G1に出場している選手には、自分たちが集めている注目や期待の大きさを、常に意識しながらレースに挑んでもらいたいと願ってやまない。
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