競輪において、並びを表明する選手コメントの重要度は限りなく高い。ファンは並び・コメントを見て展開を予想し、車券を組み立てるからだ。
そして、その並びの最終意思表示の場が選手紹介だ。発走約15分～30分前に選手はラインを作ってバンクに姿を現し、最終的な構成をファンに提示する。
この選手紹介を確認することは非常に重要だ。例えば補充の選手が来た際はコメントを取れないため、その選手がどの位置を回るかは選手紹介を見て確認することになる。また、選手が位置を巡って議論が紛糾し、その日の内に結論が出なかった際は、「連携はするけど並びの順番は選手紹介で」というコメントを出すこともある。この場合も、ファンは選手紹介を見て構成を確認する。
コメント・選手紹介はあくまでもサービス
ただしここで覚えておきたいのは、
・コメントや選手紹介はあくまでファンが車券を買うためのサービスであり、本番のレースでは流れによって並びが異なる場合がある。
・選手紹介通りに選手は走らなければならないという（罰則を伴う、明文化された）ルールは存在しない
ということ。言ってしまえば、選手はコメント・選手紹介と全然異なる位置を本番のレースで回っても良いのだ。それだけ「ライン」という概念は、「ふわっとした」ものなのである。
それでも嘘をつくのは好ましくない
それでも、競輪という競技がギャンブルの一種であり、その予想の材料がラインである以上、選手が平気で嘘をつくような真似がまかり通ってはゲームとして立ち行かなくなる。いわば、「法律的に見るとセーフだが道徳的に見るとアウト」というわけだ。
そして、選手紹介をどうしても事情により見られない、それでも車券は買いたいというファンももちろんいる。そんなファンにとっても、しょっちゅうコメントと選手紹介で並びの変更があっては、安心して車券を変えないという話になるだろう。
各人が行うべき対応は？
そのため、運営・選手・メディア・ファンが行うべき対応は以下の通りだ。
◎運営は全場・全レースの公式サイトの出走表に選手紹介VTR映像を設置する（現在、公式サイトでは行っている場と行っていない場がある）。不可能な際はYouTubeライブ等に飛ばすようにリンクを設ける。
◎選手は最低限、選手紹介の並びと周回中の並び（早くとも青板まで）を一致させるようにレースを行う。また、並びが決まらなかった際はコメントでその旨を正確に伝える。
◎メディアは選手のコメントを歪曲することなく伝える（例：「自力、自在」とした選手のコメントを「自力」とするようなコメントの省略を行わない）。
◎ファンは車券を購入する際は必ず選手紹介を確認する。どうしても確認できない際はそのレースの購入は見送るか、選手紹介前に購入した際は、コメントと選手紹介で並びの差異があるリスクを承知する。
競輪を行う上で当たり前のように捉えられているライン・コメント・選手紹介だが、その基本中の基本を軽視するようでは競技は根本から崩壊する。ファンも増えたこのあたりで今一度、本当に大切なことを意識しなおす時期が来ているのではないか。
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