【京都向日町記念「平安賞」in奈良展望】|近畿が一大勢力で別地区に挑む
9月10日から13日まで、奈良競輪場で京都向日町競輪開設76周年記念「平安賞in奈良」が開催される。向日町競輪場が改修中のため、昨年に続いて奈良での代替開催。S級S班から古性優作、南修二、吉田拓矢が参戦し、さらにオールスター競輪を制した犬伏湧也まで加わる豪華な顔ぶれとなった。
今回のシリーズを一言で表すなら、「近畿VS他地区」だろう。近畿には古性、南というS班に加え、村上博幸、山田久徳、中釜章成、さらに若手の市田龍生都、久田朔までそろった。そこへ奈良、京都の地元地区勢が大量参戦する。勝ち上がりが進むほど近畿ラインの層は厚くなり、他地区はこの巨大勢力をどう分断するかが最大のテーマとなる。
舞台は周長333メートル、見なし直線38メートルの奈良。仕掛けを待ってからでは届きにくく、赤板から打鐘にかけて位置を取ったラインが圧倒的に有利だ。最終バックで前にいることが何より重要。長いラインを作れる近畿には、バンク特性まで追い風となる。
近畿 若手が前、古性が中核――理想的な戦力構成
優勝争いの中心は古性優作。2026年は日本選手権、高松宮記念杯を制し、年間を通じて競輪界の中心に立ち続けている。奈良でも過去に記念で好走しており、333バンクへの対応力に不安はない。
ただ、今回の近畿は古性が自らすべてを動かす必要がない。
捲り・カマシの破壊力高い中釜章成は勝ち星を重ね、市田龍生都は徹底先行に近いスタイルにスイッチして近況の内容も十分。久田朔も先行、捲り双方の破壊力が高く、若手機動型の層は今回の参加地区で最も厚い。
勝ち上がりで古性と若手が同乗すれば、基本的には若手を前に置き、古性が中核を担う形が自然だろう。その後ろには南修二、村上博幸、山田久徳と、番手・追い込みでG1級の実績を持つ選手が並ぶ。
例えば市田―古性―南、あるいは中釜―古性―村上といった並びが成立すれば、奈良333バンクでは極めて強力。前が早めに駆けても古性が後ろにいることで別線は簡単に仕掛けられず、古性自身も番手から縦へ踏める。
近畿の強みは単純な人数ではない。前を任せられる若手、中核を担う自在型、最後を固める追い込み型がそれぞれそろっていることにある。
地元診断 奈良と京都が近畿大連係をさらに厚くする
奈良勢では中井太祐と田中大我に注目したい。
中井は近況、欠場明けから予選で2戦連続1着を挙げており、自力だけでなく番手でも対応できる。地元バンクでは仕掛けどころを熟知しており、近畿の若手機動型を目標にできれば上位進出の可能性は高い。
8月西武園でS級初優勝を挙げ波に乗る田中は一発のスピードが魅力。直近では捲りを中心に勝ち星を重ねており、333バンクで先に仕掛ける形なら格上相手にも通用する。勝ち上がり次第では地元ラインの先頭を任される場面もあるだろう。
一方、開催名の主役である京都勢は人数が多い。谷内健太、徳田匠、菱田浩二は前を任せられる先行型。中でも谷内は積極性が高く、近畿上位陣にとって非常に魅力的な目標となる。
窓場千加頼は近況に波こそあるが、もともと自力でビッグ決勝まで上がった選手。若手機動型の後ろを回れば縦脚を生かせる。高久保雄介、畑段嵐士、稲垣裕之もグレード開催の経験は豊富だ。
奈良と京都、さらに大阪勢まで同乗した場合、人数によっては複数の並びを考えざるを得ないケースもある。ただし、近畿同士が無理に潰し合うというより、基本的には役割を整理しながら地区全体で勝ち上がる形を優先すると見るべきだ。
関東 吉田拓矢に杉浦侑吾という絶好の機動型
近畿に対抗する筆頭は関東。吉田拓矢は今年、サマーナイトフェスティバルを制し、オールスターでも決勝2着。現在の安定感では古性と並んでシリーズ最上位だ。
さらに杉浦侑吾がいることが大きい。杉浦は先行と捲りの両面で力を発揮しており、吉田と同乗すれば杉浦―吉田という形が有力。奈良では前を任せられる選手がいるだけで吉田の勝負の幅が大きく広がる。
吉田自身が位置を取って動くより、杉浦が主導権を握り、吉田が後方を警戒しながら最終バックへ入る展開を作れれば、近畿の大ラインにも十分対抗できる。
中四国 犬伏湧也のスピードは近畿最大の脅威
単純な機動力だけなら犬伏湧也が最大の対抗馬だ。
松山オールスターで悲願のG1初制覇を達成し、今回がその後初出走。現在の犬伏は仕掛けの早さだけでなく、捲りに回った際の判断も向上している。
町田太我も徹底先行型であり、中四国が同乗すれば町田が前、犬伏がその後ろという並びも非常に魅力的だ。犬伏自身が先頭でも当然強いが、町田が風を切れば近畿にとってさらに厳しい。
奈良は先手有利。その意味でも、近畿勢より先に町田が前へ出て、犬伏まで連れて主導権を奪うことができれば、一気にシリーズの流れを変えられる。
北日本・南関東 長いラインを崩すには早めの仕掛け
北日本は酒井雄多が機動型の中心で、その後ろには佐藤慎太郎。人数面では近畿に及ばないが、役割は明確だ。酒井が思い切って先行し、佐藤が番手で仕事をする形なら短走路で残り目がある。
南関東は根田空史と佐々木眞也。根田は現在も積極策を崩さず、近況の連対も安定している。根田が主導権を握り、佐々木が後位を回る形なら強力。奈良では中団から様子を見るより、近畿より先に踏んでしまう方が勝機は大きい。
中部 浅井康太が岩井芯を得れば一変
中部で面白いのは岩井芯と浅井康太の組み合わせだ。
岩井は若手屈指の先行力を持ち、直近でもグレード開催で地力を中心に活躍中。奈良333バンクでは早めに踏める若さが大きな武器になる。浅井はその岩井を目標にできれば理想的。岩井が近畿の若手と主導権を争い、浅井が番手から縦へ踏む展開なら、一気に決勝圏まで見えてくる。
九州 阿部将大を軸に山田庸平・伊藤旭
九州も決して薄くない。阿部将大が先頭を務め、山田庸平、伊藤旭が続く形が組めれば、3車の完成度は高い。
阿部は先行、捲り双方で動け、山田は位置取りと縦脚、伊藤は番手戦も含めた自在性を持つ。近畿に人数で対抗することは難しくても、3人で役割を明確にすれば十分に戦える。
特に山田は前橋記念でも白星を重ねており、状態は上向き。阿部の仕掛けに乗って最終バックを好位置で通過できれば、直線の短い奈良ではそのまま押し切る場面もある。
まとめ 近畿を止めるには「先に動く」しかない
今回の平安賞は、近畿が明確な最大勢力だ。
中釜、市田、久田ら若手機動型が前を担い、その後ろに古性、南、村上、山田が控える。さらに奈良、京都の地元勢まで加わる。番組が進むほど近畿のラインは厚くなり、他地区にとって厳しい戦いになる。
対抗するのは、杉浦を得る吉田、町田との連係も可能な犬伏、岩井を使える浅井、そして阿部を中心とする九州勢。
奈良333バンクで後手を踏んでから近畿を崩すのは難しい。必要なのは、近畿が態勢を整える前に先手を奪うことだ。
近畿が地区総力戦で包囲網を完成させるのか。それとも吉田、犬伏ら別地区のエースがその壁を破るのか。4日間を通じて、「近畿VS他地区」という構図が色濃く表れる記念開催になりそうだ。

