競輪ワールドシリーズ2026総括|世界トップ6選手が日本の競輪に残したもの
6月から約3か月にわたって行われた「競輪ワールドシリーズ2026」が終了した。2020年度以降途絶えていた外国人選手招へいが新たな形で復活し、男子はハリー・ラブレイセン(オランダ)、ジョセフ・トゥルーマン(イギリス)、マシュー・リチャードソン(イギリス)、女子はエレセ・アンドルーズ(ニュージーランド)、ヘティ・ファンデルワウ(オランダ)、マチルド・グロ(フランス)が日本各地を転戦した。
世界のトラック競技を代表する6人が、日本独自の競輪でどこまで力を発揮できるのか。終わってみれば、その答えは「世界のスピードはやはり桁違い」。ただし男子ではライン戦への対応、女子では位置取りや仕掛けのタイミングなど、日本で勝つためには単純な脚力以外も必要であることが見えたシリーズでもあった。
ラブレイセン|世界王者の強さをそのまま日本へ持ち込んだ
成績:19戦18勝(18・0・1・0) 優勝5回
男子で最も強烈なインパクトを残したのは、ハリー・ラブレイセンだった。
防府から圧倒的な走りを続け、岸和田、立川でも完全優勝。初の9車立てG3となった和歌山でも初日から3連勝し、決勝3着が日本で唯一の敗戦となった。その後は岐阜、最終戦の川崎を再び完全優勝で締めた。
特筆すべきは、単純なダッシュ力だけではない。自ら先行する競走にも対応し、日本人選手に包囲されても勝負どころを逃さなかった。世界選手権や五輪で見せる瞬発力を、日本のスチールフレームでも再現した点に価値がある。2026年ワールドシリーズを象徴する存在は間違いなくラブレイセンだった。
トゥルーマン|最も「日本の競輪」に適応した外国人
成績:25戦13勝(13・6・3・3) 優勝1回(内G31回)
ジョセフ・トゥルーマンは、ラブレイセンほどの勝率ではなかったものの、シリーズを通して高い安定感を見せた。
過去の短期登録制度で日本競輪を経験していることは大きく、先行、捲りだけでなく周囲の動きを利用する競走も巧み。F1ではあと一歩優勝へ届かない開催が続いたが、最大の舞台となった和歌山G3で結果を出した。
ラブレイセンが3連勝で迎えた決勝でマークから抜け出し優勝、記念級のタイトルを獲得。世界大会の実績だけでは測れない「競輪選手としての巧さ」を最も感じさせたのがトゥルーマンだった。
リチャードソン|本領発揮を前に終わった不完全燃焼の夏
成績:12戦4勝(4・3・2・3)
マシュー・リチャードソンは、日本初参戦ながら随所に世界トップクラスのスピードを見せた。
小倉では初日に勝利し、伊東では連勝で決勝進出。立川でも初日1着、準決勝2着と徐々に日本競輪への対応を進めていた。
しかし立川決勝で落車。負傷により、その後予定されていた和歌山、四日市、川崎をすべて欠場し、シリーズ途中で帰国する形となった。
勝ち星だけを見れば他の2人に及ばなかったが、まだ日本独特のライン戦を学んでいる途中だったことを考えれば評価を決めるには早い。万全な状態で再び日本を走る姿を見たい選手だ。
アンドルーズ|ほぼ完璧だった女子最強のスピード
成績:19戦18勝(18・1・0・0) 優勝6回
女子で圧倒的な成績を残したのがエレセ・アンドルーズだ。
初戦の防府を完全優勝すると、青森、伊東、四日市でも負けなし。和歌山の外国人3選手による企画レースも制し、岐阜ではファンデルワウとの同着優勝となった。シリーズを通じて唯一先着を許したのは、小倉決勝のファンデルワウだけだった。
前方へ出るまでの加速と、そこから速度を落とさない持続力は日本のガールズ選手にとって大きな壁となった。ラインのないガールズケイリンでは個人能力がそのまま結果へ反映されやすく、五輪女王の力を最も分かりやすく示した3か月だった。
ファンデルワウ|勝ち切れなくても崩れない驚異の安定感
成績:19戦14勝(14・4・1・0) 優勝2回
ヘティ・ファンデルワウは、勝利数以上に安定感が際立った。
小倉ではアンドルーズを破って完全優勝。その後も青森、岸和田、立川、和歌山と決勝で必ず上位を確保し、岐阜ではアンドルーズとの同着優勝。川崎最終戦でもグロに続く2着だった。2026年の日本競輪では、一度も4着以下がない。
相手や展開に応じて先行、捲りを使い分け、勝負圏から外れない。純粋なトップスピードだけでなく、位置取りを含めた完成度の高さを示した。世界選手権で短距離3冠を達成した実力は、日本でも十分に証明された。
グロ|波乱のスタートから最後は完全優勝
成績:19戦10勝(10・6・2・0 失格1) 優勝2回
マチルド・グロは3人の女子外国人選手の中で、最も起伏のあるシリーズとなった。
防府では連勝発進しながら最終日に失格。伊東ではアンドルーズの後塵を拝したが、岸和田で3連勝の完全優勝を飾って立て直した。立川では佐藤水菜の前に3日間すべて2着、和歌山では3着、四日市でも決勝2着と、勝ち切れない開催も続いた。
それでも最終戦の川崎では初日から3連勝。決勝ではファンデルワウとの捲り合戦を制し、完全優勝で日本遠征を締めた。経験豊富なグロらしく、シリーズ後半ほど日本のレースへの対応が進んだ印象が強い。
世界の速さと日本競輪の奥深さが交差した3か月
2026年ワールドシリーズは、外国人選手の圧倒的なスピードを再確認する開催となった。一方、男子ではラブレイセンでさえ和歌山G3では一度敗れ、トゥルーマンがそのレースを制した。日本独特のライン、位置取り、仕掛けの駆け引きには、世界王者にも新たな対応が必要になる。
女子ではアンドルーズ、ファンデルワウ、グロが高いレベルで日本勢を圧倒したが、その走りを間近で経験した日本選手が何を持ち帰るかも重要だ。
外国勢が日本競輪へ刺激を与え、日本勢が世界基準のスピードを体感する。それこそが競輪ワールドシリーズ最大の価値だろう。
再始動初年度は、十分過ぎるほど強烈な印象を残した。次に世界のトップレーサーが日本へ戻ってきた時、日本勢がどこまでその差を縮めているのか。その答えを見る楽しみも、すでに始まっている。

