長いラインを組むことへの抵抗
先日行われた小松島記念決勝は、地元109期の太田竜馬が優勝。3車揃った地元ラインが上位独占を飾った。その一方で、広島の町田太我と香川の池田憲昭は別線勝負を選択。結果として5名揃った中四国勢は一つのラインを組むことはなかった。池田は中四国5車連携を見据えて、町田―太田―小川真太郎―小倉竜二の5番手回りも辞さない覚悟だったが、最年長・小倉の裁定により、町田マークを得ることとなった。
このように、同地区の選手が4名以上決勝に勝ち上がった際は、時折その並びで紛糾することがある。今回は、長いラインを組むことのメリットとデメリットを、具体的なレース例を交えて考察する。
ラインが長いことのメリット
何と言ってもラインが長くなることのメリットは、ほぼ確実に主導権を握れることだろう。ライン先頭の選手がよほど出渋らない限りは、打鐘までに先手を取ってレースを優位に進めることができる。その上で、番手の選手は後ろの反撃に合わせて番手捲りを打てば良い。番手捲りは、それなりに力のある選手が使えばほぼ最強の戦法と言っても良く、タイミング次第で格上の選手を容易に破ることも可能である。
最近で良い番手捲りの例は、今年の松山記念だろう。
地元3車を連れた島川将貴が、赤板過ぎから一気に主導権を奪い逃走。中団以降でもがく郡司浩平、松浦悠士の両SSを尻目に、最終2コーナーで松本貴治が番手捲りを放ち、橋本強—渡部哲男まで地元勢で上位独占が決まった。
ラインが長いことのデメリット
しかし、強力な布陣に見える長大ラインにも、いくつかのデメリットが存在する。
①別線の分断に遭いやすくなる
最大の死角は、別線の分断の標的になりやすい点。別線の選手は当然4車、5車を出して番手捲りを打たれては勝ち目がないため、番手まではいかなくとも、3番手・4番手あたりでイン粘り・追い上げマークをすることがある。そうなると、前の選手は下手にペースを上げられず、更に別線にカマシ・捲りを受けてラインが瓦解するケースもある。ラインの先頭を任された選手が経験の浅い若手選手だと、なおさらパニックに陥る場合もあり、4車以上のラインはその意味で諸刃の剣と言える。
②4番手・5番手は勝つチャンスが著しく低い
もう一つのデメリットは、ラインの後ろ―4番手・5番手を固める選手の勝機が著しく低くなってしまうこと。例えば実績のあるベテラン選手を4番手や5番手に回し、前の選手が勝つレースをして良いものなのか?もちろん、当の本人が良いなら構わないが、それが元となり別線勝負となることもある。こればかりは、ラインを固める選手の「心意気」に頼るしかなく、その気持ちを受ける前の選手のプレッシャーも非常に大きなものとなる。
5車連携が崩れ去った例としては、2019年の平塚記念がある。
南関東ラインが松井宏佑―和田真久留—郡司浩平―中村浩士—岡村潤の5車で挑み、当然人気は和田=郡司の折り返しだったが、清水裕友・松岡貴久のかく乱に遭い、最終バックでラインは完全に崩壊。最終的には松岡健介の捲りを食らい、最先着は切り替えた岡村の3着という結果に終わった。
近畿勢と長大ライン
この「長大ライン問題」について、取り上げておかなければならない地区がある。それが近畿だ。
近畿勢は、4車以上揃っても長いラインを組むことはあまりなく、2車・2車や2車・3車の別線勝負を選択することが多い。「誰にでもチャンスがあるように」を合言葉に、全ての選手が勝てる位置を回るラインを形成する。近畿勢と言えば特にラインの結束力が強く、前を回った選手は必ず動いて見せ場を作るレースを心掛けているが、安易な番手捲りを良しとしない空気も強いようだ。その裏側には、「番手捲りを打って自分が勝つことは容易だが、それでは前を回る若手が育たない」という考えが働いている。
印象的だったのは、昨年の福井記念。
近畿勢が5車決勝に進出し、その並びが注目された。順当なら脇本雄太―伊原克彦の地元勢に、松岡健介―村上義弘―東口善朋の並びが妥当かに思われたが、村上を中心に話し合いは紛糾を極める。1時間以上の協議の結果、脇本―松岡―東口と伊原―村上というかなり意外な並びに。レースは、最終ホームで伊原を叩き切った脇本が悠々と押し切って完全優勝を果たした。
これまでに一番長いラインは?
なお、これまでに一番長いラインは、正確な記録が残っているわけではないものの、恐らく2018年4月16日の松戸10R・A級決勝で形成された7車ラインだろう。
2018年4月16日 松戸10R
車番 | 選手名 | 登録地 |
① | 小野裕次 | 千葉 |
② | 佐藤佑一 | 岩手 |
③ | 野口裕史 | 千葉 |
④ | 沼田淳一郎 | 神奈川 |
⑤ | 高橋雅之 | 千葉 |
⑥ | 遠藤勝行 | 静岡 |
⑦ | 花田将司 | 千葉 |
⑧ | 坂木田雄介 | 千葉 |
⑨ | 阿久津修 | 栃木 |
千葉勢が5人に、神奈川の沼田淳一郎、静岡の遠藤勝行が同乗し、南関東勢は7人が決勝進出。地元勢は高橋雅之以外逃げの決まり手もある自力型だけに、別線勝負も予想されたが、なんと野口裕史―小野裕次—高橋―坂木田雄介―花田将司―沼田―遠藤という前代未聞の7車連携を決行。残った2人は佐藤佑一―阿久津修で連携するという、7対2の構図となった。
レースは、道中で坂木田がインを切り、佐藤を内に封じこめる形に。そこを野口が叩いて先行すると、打鐘で佐藤が落車したこともあり、そのまま地元勢で上位を独占。直線は小野―高橋のマーク陣が差し込み、1番人気の決着で幕を閉じた。
まとめ
今回は、長いラインを組むことのメリットとデメリット、そして過去にあった興味深い事例をいくつか紹介した。競輪において、ラインはまさに生命線。その好位置を巡っては、選手の力量だけでなく、これまでの実績や選手のプライドといった、複雑な問題が絡んでくる。そこを読み切るのは熟練のファンでも至難の業だが、それを踏まえて推理するのが競輪の醍醐味の一つでもある。「この並びが意味するところはいったい何なのか?」と、想像を巡らせて、皆さんもレースを予想してみてはいかがだろうか。
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